2011年下期のIPO再考 「東証」は難問山積?

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2011年上期(1―6月)のIPO(新規上場)社数は、6月上場予定のクロタニコーポレーションまででわずかに8社。この先のはどうか。





市場関係者A 「2011年のIPO社数は、年初段階では30―40社と票読みされていたが、震災を受けて25社プラスマイナス5社に下方修正。プラスマイナス5社といっても、マイナス寄りになる可能性が高く、20社台前半で落ち着くというのが大方の予想」



市場関係者B 「IPO社数は2009年が19社、00年が22社だった。11年も10年実績とそう大差ない社数になるかもしれないのだね。取引所はIPO審査面でも、震災の影響を考慮し、"震災特例"で柔軟に対応するようだが、皆が皆、それで救われるわけではないのだな」



市場関係者C 「ただ、ベンチャー企業のIPO意欲そのものは健在。監査法人トーマツが4月に主催した『ベンチャーサミット』には百数十社が集まった。IPOを考えるベンチャー企業を対象にした集まりだが、ソーシャルゲーム関連を含め、IT系企業の参加が多かったと聞く」



業界関係者D 「11年下期のIPO候補の顔触れはどうか」



業界関係者A 「そもそも社数が少ないこともあり、業態バラバラで、業種傾向を見いだしにくい。IPO市場の起爆剤となりそうな案件もない。強いて言えば、無料ゲーム・オンラインゲームのネクソンか。東証1部直接上場もあり得るくらいの規模感があるようだ。主幹事は野村証券が有力。IT業界で比較的知名度の高いKlabも有力候補。主幹事は大和証券が務めるもよう」



業界関係者C 「ネクソンは韓国発祥だけに市場環境次第では、海外市場に上場先を変える可能性もなくはなさそうだが。それにしても、Klabとは懐かしい。00年にサイバードの研究・開発部門として発足、04年にUSENが子会社化、07年にUSENが持ち株すべてをSBIホールディングス、SBIインベストメントの運営するファンドに売却――と資本変遷してきた。サイバードはMBO(経営陣による買収)実施で08年に非公開化。Klabはかねてサイバードの"秘蔵っ子"といわれていたけど、親会社に何かあってもきちんと買い手が付くのだから、相応の魅力があるのだろう」



――11年秋(10―11月)の「東証IPO説」が出ている。3月10日に報じられた『東証大証経営統合協議』と、東証IPOは密接に絡んでいるようだが。3月以降、東証・斉藤惇社長、大証・米田道生社長ともに経営統合に関するコメントは一般論にとどめ、確証を与えない物言いを続けている。



市場関係者A 「さもありなん。現段階で経営統合について取引所のトップに対し、記者があの手この手で球を投げたところで、まともに返してこないのは、無理からぬこと。経営統合の方向性で意見一致をみているとしても、経営統合の時期やスキーム、買収金額などに溝があれば、下手に言えないもの。経営統合のポーズだけで、本質的な議論になっていないのでは。商品取引所と証券取引所の統合、いわゆる総合取引所構想との兼ね合いなど、目配せしなければならない事柄が山ほどあるしね」



市場関係者B 「野村証券出身の斉藤惇氏は、東証社長就任から間もなく丸4年。日銀出身の米田道生氏は、大証社長就任から7年半になる。両社の統合は黙っていたら5年かかる。お互いに目の黒いうち(社長在任期間中)に統合したいのだろう。ただ、経営統合について、基本的に東証大証に比べて『長期戦』、大証は『短期決着』の構えとも言われている」



市場関係者D 「と言いますと?」



市場関係者B 「一説では、東証は自身のIPOを先行させ、IPO後の経営統合を考えているとも。経営統合につきものの価値算出法は、過去の売買事例、純資産価値、デューデリしてディスカウントキャッシュフロー法と色々だが、今のままでは東証の価値は思っている以上に低く抑えられてしまう可能性があり、公の場(=市場)で価値を決めてもらった方がいいという考え方もあるようだ。これが『東証IPO先行説』の背景」



取引所評価は現物<オプションの流れも





市場関係者C 「合併が実現すれば世界最大の取引所となる、ドイツ取引所とNYSEユーロネクストの例では、市場価値はオプション主力のドイツが1兆3000億円、現物主力のNYSEは7000億円。つまり、高収益のオプション取引を主力とする取引所を高く評価するのが今の潮流。日本に置き換えると、東証は現物が主力、大証はオプションが主力だからね。時価総額では、大証1000億円に対し、東証は1200億円〜1400億円、時価総額"東西逆転"で評価する向きさえあるようだ。これでは、方々にいる"東証財閥"も納得しまい」



市場関係者D 「そうであれば、なおのこと東証にIPOインセンティブが働く。3月10日、経営統合協議入りと大々的に報じたのは、紙は日本経済新聞、放送はNHKで、世間にほぼ同着で伝えた格好。それぞれに花を持たせて、東証は上手い。IPO前に大証との合併をぶちあげれば、ほかのメディアもこぞって追いかけ、記事が出る→投資家の頭に『いずれ東証は合併する』との情報が刷り込まれる→IPOの暁には合併を前提に市場で株価形成がなされ、株価に"色"が付く→経営統合するとなった場合も価値判定で有利になる――という寸法か。IPO時期が近いとこの手法は使えなかっただろうが、あのタイミングで"長距離砲"を打ち込めば効果も大きかろう」



市場関係者C 「東証の株価が実力以上になれば、東証株を売り払って、店じまいしたい中小・中堅証券の人もハッピー」



市場関係者A 「大証にしたら、東証の価値に色が付く前に、東証のIPO前に『短期決着』したいところなのだろう」



――そもそも東証は今年、IPOできるのか。



市場関係者A 「東証のIPO主幹事決めの『ビューティーコンテスト』から、8年、いや、9年は経過したか。なんと長丁場の案件か」



市場関係者B 「東証に先駆けて、04年に上場した大証のIPOアドバイザーは野村証券東証のIPO主幹事は、外資証券を含めて数社で構成されようが、トップレフトを務めるのはやはり野村証券のようだ。時価総額1000億円以上ならば赤字でも東証1部に上場できるものの、東証は晴れて11年3月期に黒字転換し、業績面では一応、格好の付く形」



市場関係者C 「ただ、東証は大型訴訟を抱えている。05年12月にみずほ証券ジェイコム株の誤発注で出した400億円を超える損失を巡って東証を訴えた、あれね。額が額だけに、みずほ証券はあいまいにはできない様子。東証IPOのキャスティングボートを握る1社といえ、落としどころは見つかるのでは」



市場関係者D 「そもそも経営統合協議入りが取りざたされ、近い将来の合併もあり得る企業は上場できるのか」



市場関係者A 「規定第205条第12号(合併等実施見込みのIPO規定)などによれば、業績などに重要な影響が予想される統合を予定している企業のIPOは、簡単ではない。上場基準となる決算期末日から2年内に合併等を予定している場合などでは、IPO申請不受理基準に引っ掛かり、申請を受け付けられないことがあり、申請が受け付けられたとしても相当細かく調べられる。そんなこんなで合併を前提にしたIPOは過去ほとんどないが、生保で事例はある。いずれにせよ、大証との経営統合含みの東証IPO案件となれば、値決め、販売面への兜町霞が関からのプレッシャーも相当なものになろう」



市場関係者D 「経営統合のスキームの1つとして、『東証上場と同時TOB(株式公開買い付け)案』も一部でささやかれている。そんなことはできるのか」



市場関係者A 「TOBにより、東証が実質的存続会社でなくなる場合、東証のIPOそのものが認められない。逆に東証が実質的な存続会社になるのなら、道はある。ただ、本来的に、IPOとほぼ同時並行でのTOBは非常に難しい」



市場関係者B 「とはいうものの、国策的な企業の場合、IPO特例を設けるケースもある。例えば、大量の株主を抱える第一生命(初値の値決めはザラバ方式でなく、1回寄せて当日取引終了)、黄金株を出していた旧国際石油開発(黄金株発行企業のIPOは原則認められていない)、JRもそう」



市場関係者C 「どうであれ、東証大証に対しTOBをかけ、東証が実質存続会社になる流れが、最も多くの人に受け入れられるのだろう」



市場関係者D 「世界的な取引所の合従連衡は、00年ぐらいから活発になっている。一方、日本の証券取引所は、新潟、京都、広島にある地方証券取引所の吸収にとどまり、さらに残る証券取引所はそれぞれ新興市場を作るなどして、"コップの中の水量調整""コップの中の争い"に始終していた。日本経済が高度成長期ならいざ知らず、安定成長期に入り、新興国が目覚ましい成長を遂げ、かつ、資金もグローバルに動いている。東と西の横綱同士の統合構想は遅きに失したという印象だが、やらないよりはいいだろう」



市場関係者A 「個人的には、東と西の横綱同士の経営統合は小さな話。中長期的には、例えば、NASDAQ、香港証券取引所などの海外取引所との結び付きを深め、システム連携、相互上場などを行っていかなければ、世界の大きなうねりの中で日本市場は取り残されてしまう。アジアの強者、アジアのハブ市場と2度と言えなくなる。単なる"東西統合"だけでは意味がなく、海外市場と肩を並べて闘っていくための第2ステップの方が重要」(日本証券新聞





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