2011年IPOは30−40社程度?カルビー、ポッカHD、バイオベンチャーなど

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多少の浮き沈みはあってもIPO(新規上場)は株式市場の花形。2011年のIPO見通し、IPO有力候補銘柄などを業界関係者に聞いた。

――11年のIPOの社数見通しは。

業界関係者A 「IPO社数は09年が19社、10年は22社。22は当初想定の範囲内。新年への持ち越し案件が数社あるが、それはIPO界では常であり誤差のうち」

業界関係者B 「11年IPOは30―40社と票読みする向きが多い。エントリーベースでは90社前後だが、実際に出てくるのは通常は3掛け。環境が良ければ5掛けだけどね」

業界関係者C 「全体相場は来年、上昇期待が強い。IPO市場もその恩恵に預かりたいもの。ただ、大企業の業績が上向いても、中小・ベンチャー企業まで波及するかは未知数。IPO社数は09―10年の鍋底から、11年は薄日が差し、12年より多少回復してくるものとみている」

金融庁、取引所、主幹事で3すくみ

――最近の上場審査スタンスは。

業界関係者A 「なぜIPOがこんなにも少ないのか、金融庁は1年ほどかけて、IPOできなかった企業も含めてヒアリングしてきた。J―SOX対応の負担が重過ぎる、IPO申請したが不受理の理由の説明がない――などさまざまな意見が寄せられたもよう。同庁は年内にも新興市場に関するアクションプランを出すと聞く」

業界関係者B 「それに合わせるのかな。東証マザーズ市場の信頼性回復とIPO社数増加の両面から規則改正を含めた制度改革案を間もなく打ち出すとのうわさが出ている」

業界関係者C 「東証は例えば、IPO審査項目の労務管理にしても、画一的基準に当てはめるのをやめるかもしれない。労働基準監督署から指摘を受けた企業、外食など多店舗展開企業、システム開発系企業についてはわりと細かく調べ、それ以外は柔軟に対応するようになるのでは」

業界関係者D 「上場審査緩和というより、今まで締め付け過ぎていた部分を適正水準に戻し、同時に仕組みそのものも多少手直しするということのようだ。本則市場(東証1・2部市場)の規則にも多少手を入れてくるかもしれない」

業界関係者A 「でもまぁ、東証マザーズ市場改革案には主幹事証券には受け入れがたいものも含まれているようだ。東証がかじを切ったからといって、主幹事証券もすぐに右に倣えというわけにはいかなさそう。取引所と主幹事証券では立場も異なる」

業界関係者B 「制度改正の効果が出てくるまで多少のタイムラグがあるということか。その間、上場準備企業の目線では、何も変わっていないじゃないか、ということになりそうですね」

業界関係者C 「証券会社もIPOが少ない現状に問題意識を持っている。しかし、主幹事証券は上場審査基準をそうそう緩めるわけにはいかんのだよ」

業界関係者D 「金融庁の検査を考えるとね。エフオーアイのケースは論外だが、例えば、上場間もない企業が大幅下方修正したり、公開価格を大きく下回る状態が続いたりすると、『どのようにプライシングしたのか、資料をすべて提出しろ』となる」

業界関係者A 「金融庁から指摘されること自体、マイナスポイント。それぞれの立場で仕事を全うするため、東証が多少緩めたとしても、問題を起こさないように、ハードルを高めに設定してしまう嫌いはある。それだけ検査が脳裏に焼きついている」

プロ向け市場(AIM)は閑古鳥!

――09年6月開設のプロ向け市場、TOKYO AIMはどうか。

業界関係者B 「開設以来、1社も案件がなく閑古鳥が鳴いている」

業界関係者C 「上場希望企業はあるが、本格的にスケジュールに乗っているものは今のところない」

業界関係者D 「手を挙げる企業は、ノーマッドが負う責任の大きさに比べサイズが小さい、既存市場に出にくい業態といったたぐいが多い。AIM上場に手を挙げる企業はそれなりにワケあり。それをノーマッドにのみ込んでもらいたいようだが、そうは問屋が卸さない」

業界関係者A 「いわば需要と供給のミスマッチ。ノーマッドが手掛けたいと思う企業が見つからないのが正直なところ。サントリー、ヤンマー、竹中工務店のような企業が出てくれば話は別」

――11年のIPO有力候補は。

業界関係者C 「一般認知度が高いところでは、まずはカルビー、再上場案件のポッカコーポレーション。ともに大和証券が主幹事を務めるもよう」

業界関係者D 「ポッカは10年IPOも取りざたされていた。同様に液晶ガラス基板のアヴァンストレートも持ち越し案件。こちらも主幹事は大和」

業界関係者A 「日興主幹事案件では、日興アセットマネジメント三光汽船などが候補に挙がる。実際のところ三光汽船は12年以降になると思うが」

業界関係者B 「三光汽船とは...会社更生法を申請した1985年を思い出す。当時 日本における戦後最大の倒産だった」

業界関係者C 「野村主幹事で島根銀行の名も聞かれる」

業界関係者B 「こうして見ると大和案件が目立つ」

業界関係者A 「もっとも大和はこれで貯金を食いつぶしてしまうのでは。カルビーにしても、もともとはみずほインベスターズの案件。事情あってくら替えするなら、ふつうはみずほ証券だろうが。いまだ興銀、一勧、富士の縄張り争いが続いている1つの証左だね」

業界関係者D 「バイオベンチャーでは、2010年IPOの話もあったラクオリア創薬が出てくるかどうか。三菱UFJ主幹事のシンバイオ製薬もIPO準備を進めているようだが、時期は判然としない。野村主幹事のエムズサイエンスは中枢神経系治療薬での製薬会社との提携が実現すれば、IPOがぐっと見えくる」

業界関係者B 「新業態でいくと、11年にIPOするか分かりませんが、四国に農業関連の面白い会社があるらしく、野村が熱心に足を運んでいるようです」

――念のため。過去IPOが取りざたされた政府系案件どうか。

業界関係者A 「11年IPOは望み薄。東京メトロ都営地下鉄との統合問題が決着しないと。日本郵政も当然ない。東証みずほ証券との係争中、さらに総合取引所構想が浮上し、身動き取りづらい。西武も潜在的候補だが、堤氏保有株の帰属を巡り係争中。JR九州も来年3月に九州新幹線が全線開業となるが、少なくとも前3月期は本業赤字、ミルク注入(経営安定基金)のおかげで経常黒字の状況。JALの再上場も12年度以降」

業界関係者C 「あと成田空港もなぁ」

業界関係者D 「これら政府系案件のIPOはおおかた12年度以降か。12年になればIPO件数もだいぶ回復してこよう。ただ、IFRS対応をどうするか。上場準備には相応の時間がかかる。早く決めてくれないとせっかくのIPO回復に水を差すことになりかねない」(日本証券新聞

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