【IPO市場、11年も30社程度か】

2010年のIPO(新規上場)承認企業は7月13日現在で13社と低空飛行。「エフオーアイ・ショック」に代表されるIPO銘柄の不祥事が尾を引き、年後半について明るい見通しを口にする関係者はゼロに近い状態となってしまった。IPO市場関係者、監査業界関係者にIPO周辺事情を聞いてみた。

IPO市場関係者A 「今年のIPO件数は25―30社との見方がコンセンサスになりつつあるが、年後半の環境が悪ければ、前年(19社)並みにとどまるかもしれない」

IPO市場関係者B 「2011年の"票読み"も始まっている。11年も『今年とそうは変わらない』とか、『そう多くを望めず30社程度』といわれている」

IPO市場関係者C 「11年までIPO件数が増えないのはしょうがない。企業は思った通りの利益を出せず、加えて上場審査も厳しくなっているのだから」

IPO市場関係者B 「先にエフオーアイシニアコミュニケーションが上場前から決算粉飾に手を染めていたことが発覚した影響?」

IPO市場関係者A 「それだけではない。キャンバスも武田薬品と提携していたからIPOできたのに、提携解消の憂き目に。こうも立て続けに悪材料が出てしまうと...」

IPO市場関係者C 「証券会社も取引所も、もともと上場審査に慎重姿勢だったが、こうも不祥事が続くと、『2度とあってはならない』ということで、さらに慎重スタンスにならざるを得ない。これまでなら枝葉のこと労務管理面など多少のことは目をつむり、許容されていた部分もあったが、今は"遊び"の部分はナシ。投資判断や企業業績に与えるインパクトが大きくない事柄でも掘り下げざるを得ない空気がある。しはらくは厳格運用が続くだろう」

IPO市場関係者A 「IPO社数の低迷で、IPO関連部署はもう一段のリストラがあるとのうわさも」

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監査チェックに限界?

――そもそも完ぺきに仕組まれたら、粉飾をなかなか見破れないとも聞く。IPO銘柄選別において監査法人もチェックポイントに挙げる人が増えてきたが。

監査業界関係者D 「エフオーアイの場合、海外企業に販売しているかのように見せ掛けていた。大手監査法人ならば海外の提携事務所を使って取引が実在しているのか調べられるが、中堅・中小監査法人はそんなネットワークを持っていない。中小・中堅監査法人が自ら現地に赴いて調べようとしても、このクラスの監査法人に任せる企業はおうおうにして資金に余裕がなく、監査法人の海外出張費や調査費を出せない。結局、監査法人は書類確認で済ませることになる。特に海外取引関連書類の場合、中堅・中小監査法人ができる"裏取り"は限られてくる」

監査業界関係者E 「むろん、このクラスの監査法人は何か問題が表面化すると死活問題になるから、ベテラン会計士が丹念にチェックしているケースも多く、中小・中堅監査法人だからダメとは一概には言えない。ただ、食っていくため、大手監査法人からあぶれた企業を担当することになりがちなのは確か」

監査業界関係者D 「大手監査法人からもれた企業は、問題のある確率は高いには高い。あるベンチャー企業を担当していた時、不可解な点があったので指摘したら、第一声は『あー。やっぱり見つけちゃいましたかぁ』。これを聞いた瞬間、ほかにも何か隠しているのではないかと、背筋が寒くなったよ」

監査業界関係者E 「企業は不正会計まではいかないまでも、何らかの会計操作をしているものだが、問題が10あるとして7つは見つけられようが、残り3つを見つけられるかどうかはなんともいえない。監査にも限界はある」

監査業界関係者D 「それはそうと、IPO主幹事担当率を見ると、野村証券が圧勝しているね。今年はいまのところ野村証券の主幹事担当率は7割だ。以前、野村証券が主幹事でなくとも副幹事に入っていればまず安心と聞いた。裏を返せば、野村証券が副幹事を断った企業はアブナイと」

IPO市場関係者A 「IPOマーケット関係者が"危ない案件"として秘かにマークしていたのは、00年前後は国際証券、ゴールドマン・サックスなどの主幹事案件。その後は、マネックスSBIなどネット証券、メリルなど外資系証券、中堅・中小証券の主幹事案件を注視していた。一方、IPOマーケットでは野村主幹事なら安心という"ノムラ神話"が生きているけど、数年後はどうなっていることやら」

IPO市場関係者C 「まあな。ノムラは昔からノルマ証券と言われていたが、ノルマ主義は支店営業、本店は必ずしもそうではなかった。しかし、リーマン子会社化後、IPO関連部署にもノルマが課せられているとのうわさ。最近は見境がなくなり、これまでなら手を出さなかった案件も手掛けている。野村証券の代わりを果たせるのは大和証券ぐらいなのだが...」

IPO市場関係者A 「IPO条件が整う企業が少ないだけに、主幹事フィーも牛丼業界のように値引き合戦」

IPO市場関係者B 「IPO主幹事選定に向けてエクイティーストーリー、バリュエーション、スケジュールなどを複数の証券会社が提案して、企業に選定してもらう通称ビューコン(ビューティーコンテスト)ですね。以前はビューコンを開催するのは、規模の大きい会社か、ファンドが大株主になっている企業ぐらいだったが、最近は中小企業、ベンチャー企業も開催するケースが増えている」

IPO市場関係者A 「ビューコン参加証券は、野村、大和、三菱UFJ、みずほ、日興のIPO主幹事大手5社。野村は野村R&A、大和はDIRと共同提案するなど積極攻勢、加えて両社ともにフィーのディスカウントをしてきている」

IPO市場関係者C 「特に大和はフィーのディスカウントが激しい。IPO主幹事フィーに限らず、デッドもあり得ない条件で引き受けている。なりふり構っていられないようだ」

IPO市場関係者B 「ふぅー。IPOマーケットが委縮し、IPO復活のカンフル剤なんてものも見当たらず、当面は八方ふさがりか。しばらくは、手数料のカサが狙える民営化案件を含めて大型案件、再生案件に集中か」(日本証券新聞

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