2011年のIPO展望−東証の上場基準緩和に注目

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 2011年のIPOは2010年に比べ、引き続き回復が見込まれている。引受関係者の間では30〜40社というのがコンセンサスのようだ。景気回復は足踏み状態だが、落ち着きを取り戻していることは確か。その分、昨年よりも脱落する候補が少なくなりそうだという。
 また、東京証券取引所ではマザーズの改革を進めており、上場維持基準を強化する代わりに上場基準を緩める方針だ。具体的には遡及(そきゅう)監査が認められれば、成長スピードが速い企業が前倒しで上場する可能性が高まるという。

 今年上場が見込まれる著名企業の候補は、かつて名前が一度は挙がりながらも、まだ上場していない企業が多い。カルビー西武ホールディングスポッカコーポレーション東京地下鉄など。これに加え、三光汽船などと再上場の案件も目立つ。昨年上場延期が報じられたところでは、足利ホールディングスなどもそうだろう。このほか、成田国際空港東京証券取引所グループも毎年のようにリストには上がる。また、スピンアウト案件としては三洋ホームズや、一時は昨秋にも上場が目されていたAvandtrate(旧・NHテクノグラス)などがある。東京地下鉄は東京都が目指す地下鉄一元化問題がここ数年ネックになっていたが、今春には都知事選があるため、都知事が替われば風向きが変わるのではないかともいわれている。

 一方、海外にも目を向けたい。一時は韓国に日本企業が上場する観測が報じられた。フードディスカバリーSBIモーゲージなどが取りざたされた。ただ、海外上場は現地での展開を踏まえた企業を除けば、翻訳などの手間が障害となる。かつては、韓国市場のPERは日本より高かったものの、最近では資本コストもほとんど変わらない。また、成長シナリオが問われるのは世界共通。韓国上場を目指す企業は、日本で上場できない企業も少なからずあるとされ、そうした企業は上場場所を変えたからといって、容易に買い手が見つかるわけではない。

 また、米国市場では昨年、スカイプが上場申請した。グーグルの買収を拒否したグルーポンも年末までに上場すると伝えられた。フェイスブックは株主数が500人以上となりそうなことから、上場が前倒しされる可能性がある。日本企業に関連したところでは、日立子会社の日立グローバルストレージテクノロジーズニューヨーク証券取引所に上場する計画だ。そのほかでは、伊フィアット傘下で再上場する方針のクライスラーなど、世界的にも話題の企業が挙げられる。
 アジアの新興国では中国のIPOが今年も盛んだ。国営メディアの公開が相次ぐとの観測があるほか、本土のIPO総額は5兆円近くに上るとの見方が出た。イタリアブランドのプラダは本国と同時に香港への上場を検討している。日本の大手証券も最近では、アジアでの引き受けに注力していることから、日本での募集にも期待したいところだ。

 全体的に今年は海外に比べると国内の勢いは劣勢なものの、ともに明るい方向である。もっとも、昨年のIPO銘柄の上場後の株価推移を見ると、上場した銘柄のうち公募価格を今でも上回るのは22銘柄中5銘柄のみ。初値が公募価格を上回ったのもギリギリ過半数という状況だ。足元で活気づく中小型株相場がこのまま持続できるかどうかも上場が活発になるかどうかの鍵となる。まだ、第1号となるIPOは承認さえされておらず、今年も3月になるのではないかと思われるが、海外に負けない魅力的な企業の上場に期待したい。(トレーダーズ・ウェブ)

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