大塚HDを相場的に大解剖 株式需給は意外に重くない

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かねて、年内上場がささやかれていた大塚ホールディングス(4578)の東証上場が前週末12日に承認された。上場日は12月15日。同社は大塚製薬大鵬薬品工業大塚化学、大塚倉庫、大塚食品など子会社116社、関連会社29社で構成される持ち株会社。傘下に著名企業を抱え、連結売り上げ1兆円超。しかも、売り上げの半数近くを海外で稼ぐ有力企業が、グループ再編を経て「満を持して上場」してくるとあって、早くも市場の関心を引き付けている。

資金調達は海外重視型

大塚HDは、上場に伴い8000万株の公募、1000万株の売り出し、需要状況に応じて最大450万株のオーバーアロットメントによる売り出しを行う。目論見書に記載された想定発行価格(2400円)から算出した市場調達額は2160億円(オーバーアロットメントによる売り出しを含めると2268億円)となる。

参考までに、2006年度以降で新規上場に伴う市場調達額が1000億円を上回った案件および調達額は、06年度が野村不動産HD(3231)1654億円、出光興産(5019)1204億円、アコーディア・ゴルフ(2131)1240億円、あおぞら銀行(8304)3800億円。07年度は3480億円のソニーフィナンシャルホールディングス(8729)のみ。その後、08年度、09年度となく、10年度になって市場調達額1兆89億円の第一生命保険(8750)が出てきた。

大塚HDも単純に市場調達額で見れば「超大型IPO(新規上場)」に位置付けられ、一部では「需給の重しになるのでは」と懸念の声も聞かれるが、実はそうでもなさそうだ。

というのも大塚HDは、公募8000万株のうち7割に当たる5670万株を海外で募集し、国内募集は2330万株にすぎない。つまり、国内市場からの資金調達額は、公募、売り出し合算で799億円、オーバーアロットメントによる売り出しを加えても907億円と「1000億円未満」にとどまる。

市場関係者からは「海外公募とオーバーアロットメントを含めた最大市場調達額(2268億円)は第一生命の4分の1でしかない。さらに国内募集規模は絞られる。これらを踏まえると、大塚HDは超大型IPOではなく、"普通のIPO"という計算が成り立ってくる。需給悪化懸念うんぬんが言われるレベルではない」との見方も聞かれるが...。

国内製薬企業の上場出そろう

さて、大塚HDの時価総額だが、想定発行価格から試算すると1兆3000億円。国内医薬メーカーでは、第一三共(4568)を上回り、アステラス製薬(4503)を追撃する位置に躍り出る。また、"未上場製薬の大御所"大塚製薬を抱える大塚HDの上場により、大手製薬会社がすべて上場することなり、今後の業界再編、M&A(企業合併・買収)の行方にも関心が払われてこよう。

上場承認翌営業日の15日、大塚HD関連株は総じて一服だが、大塚HDは上場に伴う公募増資で得た資金は、医薬用医療品の研究開発、食品・飲料事業の製品や販売の強化に充てる方針を示しており、これらの恩恵享受が読まれる銘柄を中心に折に触れ物色されそうだ。

ニチバン、栄研化、曙ブレーキとの関係は

意外な関連銘柄を発掘

リニカル(2183・東マ)、オンコセラピー(4564・東マ)といった本紙既報の銘柄のほか、主な関連銘柄は次の通り。事業面で提携関係にあるのは、02年に経腸栄養剤の製造販売で提携し、イーエヌ大塚製薬として合弁事業を展開している雪印メグミルク(2270)、三菱瓦斯化学(4182)、扶桑薬品工業(4538)など。

三菱瓦斯化学大塚化学と04年に提携し、水加ヒドラジンの製造販売でエムジーシー大塚ケミカルを合弁展開している。水加ヒドラジンは合成樹脂などの発泡剤、空調設備やボイラーの循環水処理剤、金属還元剤、各種金属の還元剤、燃料電池、医農薬中間体などに用いられ、国内シェア断トツだ。扶桑薬品工業はがん治療用ワクチンで大塚製薬と連携している。

資本提携関係(大塚製薬大鵬薬品が大株主)にあるのは、アース製薬(4985)、栄研化学(4549)、阿波銀行(8388)、ニチバン(4218)など。

大塚HDの主な株主としては、阿波銀行が1097万株(2・11%)のほか、スズケン(9987)329万2000株、メディパルHD(7459)が260万4000株、アルフレッサ(2784)245万6000株、TBS(9401)とフジメディア(4676)が各200万株、常盤薬品(7644)160万株、曙ブレーキ(7238)とオリックス(8591)、雪印が各100万株――などが名を連ねる。

医薬品問屋が事業のつながりで株式を保有しているのが目立つ。JASDAQで流動性が薄い常盤薬品は突飛高の可能性も。異彩を放っているのは曙ブレーキ。曙ブレーキIR担当者は、「大塚グループの一角、大塚化学から摩擦剤の材料を仕入れている。取引関係は何十年にも及び、その関係から2年前の増資に際し、声が掛かったようだ」としている。今後の関連株物色も大塚HDのブックビルディング人気度などをにらんで動意を強めてくるかもしれない。(日本証券新聞

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