【IPO市場の現況と今後の展望】

株ブログ IPO・新規公開株




2010年の第3四半期のIPOはわずか3件に留まり、その調達額は26億円と日本のIPO市場は見る影もない。通年では15件で7718億円(海外調達除く)となっているが、4月にIPOした第一生命の7153億円を除けば565億円と昨年並みの低調さである。そして年内のIPO件数は昨年の19社に引き続き20社を少し上回る程度で終わりそうだ。



それに引き換え既上場の大企業は1月から9月に74件で4兆1592億円のエクイティファイナンスを実施している。先週東京ガスが5000億円近い公募増資を発表しており、通年では昨年の5兆5680億円を凌ぐ額になると推測される。株価が下落してもお構いなしの姿勢が見られる増資が多いが、大企業はグローバルな大競争時代に円高を利用してM&Aや投資するタイミングだとの認識なのであろう。



さて、話題をIPOのほうに戻して、IPO銘柄の株価動向について見て行く。



今年の15社の初値騰落率の平均は21.3%。最も高かったのはパピレスの127.4%、最低はアイ・ケイ・ケイの-15.7%であった。初値が公開価格を上回った銘柄が7社、下回った銘柄が5社、同値が3社とかなりばらつきがある。数年前のように公募・売出株を買えば必ず儲かる時代ではなくなってきた。



そしてセカンダリーの動向であるが、東京IPO作成の一代足チャートでみると一目瞭然であるが、9月末の株価が初値を維持している銘柄はひとつも存在しない。



初値を上回る株価が付いているIPO株を探すと直近から24銘柄遡るクックパッド(2009年7月17日上場)になる。裏を返せば直近の23銘柄はすべて初値以下の株価が付いているということである。


今年上場した15銘柄の9月30日現在の公開価格からの騰落率は平均で-15.2%、そして公開価格を維持している銘柄はアニコム、ボルテージ、パピレスの3銘柄のみである。これではIPO株に投資したいと考える投資家は居なくて当然ではないだろうか。

しかしながら、このように株価が低くなっているということはバリュエーションも相当低くなっているということである。そして誰も見向きもしなくなった銘柄はいつも売買低調でPERは1桁というのが常である。



2009年、2010年にIPOした33社のPERの水準と配当利回りを調べてみると以下のようになっている(10月1日終値ベース)。




社数

無配

8

1%未満

3

1-2%

6

2-3%

5

3-4%

5

4%超

7
 

PER倍数

社数

赤字

4

10倍未満

20

10〜15

2

15〜20

2

20倍以上

5


なんと配当利回りが4%超の銘柄が7件もある。またPER10倍未満の銘柄は20件である。株式投資の環境が平時であれば、よだれが出るような株価水準の銘柄が放置されていると言っても過言ではないか。



読者の皆様の参考までに、配当利回りが4%超の7銘柄を以下に並べておく。




常和ホールディングス 5.2%
八洲電機 4.0%
・シーボン 6.0%
・SHO−BI 4.8%
・アゼアス 4.2%
・FPG 4.6%
・フーマイスターエレクトロ二クス 4.5%


なんと9月決算銘柄が3銘柄も含まれていたのは今となっては時すでに遅しではあるが、これらの銘柄のバリュエーションが今後どのように変化していくのかを毎月追っていきたい。



先週、外資系運用会社の元ファンドマネジャーだった外国人某氏とミーティングを行った。その時に日本の新興株式市場の復活に期待を込めて同意したのは「外国人投資家のマネーは日本の中小型株に必ず回帰してくる」ということである。それは、アジアの新興国に流れ込んでいる世界中の投機マネーが、どこかで自分たちの投資している市場が割高になっていることに気付き、よくよく見てみると日本の中小型株が割安であることに気付く時がくるはずだからである。



このレポートを書いている10月2日の日経新聞の株式欄にあるJASDAQの投資家売買動向をみると、9月第3週、第4週と外国人投資家は大きく買い越している。JASDAQの予想利益ベースの平均PERは12倍台まで低下しており、上場企業の業績に下方リスクさえなければいつ株価が反転してもおかしくない水準まで下がっている。



最後に読者の皆さんには「人の行く裏に道あり花の山」という格言を思い出していただきたいものである。(東京IPO




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